矢野葉月、脳内にいくつも分かれた記憶フォルダの中から“小学校”を奥底から拾い上げる。


このフォルダは南雲直くらいしか収録されていなくて、もう小さく、縮小されているから望みは薄かったけれど、なんとなくうっすらとその名前に聞き覚えがあったから手のひらに乗せることができた。




「いいですよ」




先輩にはそう返して、葉月くんと連絡先を交換することになった。



後から葉月くんに聞いたら、小学校の時は児童会長と応援団長をやっていたらしい。どれだけ興味がなくても関わりがなくても名前と顔くらいは記憶にあるのは当然だと納得した。



そこまで目立つタイプではないわたしのことはきっと知らなかったと思う、誤魔化すように小さく笑っていたからそれが答え。