低温を綴じて、なおさないで




いつかのような強い言葉とともに、強引に口が塞がれて次の言葉を紡がせてはくれなかった。重なる唇、追われるように求められることに、嫌悪感なんてなかった。


もっと、わたしだけって言って。わたし以外見ないで。幼なじみって関係より、もっと特別な唯一無二になりたいの。



顔の横に放り投げた手が、直の指と恋人みたいに絡む。つめたさがわたしに馴染んで、ひとつに溶けてゆく。




「……ただの幼なじみは、こんなことしない」


「……っ、」


「俺はずっと、栞じゃなきゃ嫌なんだよ。嫌なら殴って、俺は栞以外いらないから」




すきなひとじゃないといやなこと、直ならいい、って思ってた。


傷つきたくないから、そんなふうに誤魔化してた。


違う。全部、違った。紛れもなく、すきなひとは昔からずっと直しかいなかった。



ほんとうはわたしも、直がいい。直じゃなきゃ、嫌だよ。