低温を綴じて、なおさないで




抵抗する間もなく一瞬で身体が宙に浮く。履いていた靴が脱がされて、そのまま簡単に抱きかかえられて降ろされたのはベッドの上だった。


わたしに覆いかぶさるように、視界が直で埋め尽くされた。……見たことないくらい、複雑に感情が入り混じった表情で。



やさしさと愛情を、いついかなるときも向けてくれていた直が、くるしさ、切なさ、やるせなさ、わたしみたいに黒がかったような感情を混ぜ合わせていた気がして。


もしかしたら、わたしが直を傷つけていたんじゃないか、なんて思った。




「栞はいつも、“直なら”って言うけど、」