後頭部に手が回って引き寄せられた。再度、重なって、今度は唇の隙間から舌が入り込む。
立っていられなくなるほどのあまくて深いキス。へなへなと座り込みそうになるのに、腰が支えられているせいで逃げられない。
この間わたしが求めたときよりも、ずっとあまくて、その分やさしさが小さくなったみたいだった。
だめ、直のこんな自分本位なキス、知らない。なのに、押し返すなんてできない。受け入れるしか選択肢、ない。犯されていく口内に、甘い息が漏れてゆく。
「栞」
「な、に、」
「付き合ってもないのにキスなんかする俺みたいなやつ、家に入れんなよ。家にも来んな」
唇を離した直が、低い温度の灯った視線を向けて、掠れた声で自嘲するように笑った。いつもマイルドな口調なのに、すこしだけ強く、投げられた。
そんな忠告、直に適用するわけない。直以外、入れるわけない、行くわけない。
「でも、直なら、いいから」
「……だから、それ、なんなんだよ」
「っ、!」



