「ん、」 あの夜空の下と同じように、わたしの唇を下からすくうようにして重ねられた。あげたまぶたを再び落とす間もなく離れた温度、今、重なり合っているのはお互いしか映っていない視線だけ。 目を閉じて、と言われて唇を重ねられると想像できた。だけど、一瞬の柔らかさはわたしが目を開けた瞬間に落とされた。 触れるだけ、タイミングをずらしたこのキスの意味が、何もわからない。 「な、なお、」 「……なんで拒否んねーの。なんで素直に従うんだよ」