低温を綴じて、なおさないで





𖦞




401号室。当然のようにわたしの部屋のドアを開けたのは、直が持つ合鍵。直がこの合鍵を使ったのはきっとはじめて。



わたしの後ろでドアが閉まって、がちゃん、と音が聞こえてから「栞」とわたしを呼ぶ声を拾った。



さっきまでのこわい声とは違う、だいすきな直の温かな声色を受け取って顔を上げたら、さっきとはまたちがう、なのに綺麗な顔を歪ませてくるしそうにして。




「栞、矢野葉月と付き合うの?前、あいつに泣かされてたのに」


「つきあわないよ。断ってたの」


「……じゃあさ、もういい加減、俺にしてよ」