「久しぶり。栞ちゃんのこと、待ってた」


「……今さら、なんなんですか」


「まあまあ、そんなこと言わないでよ。さみしいな」




……ほんとに、どの面さげてここに来て、どの口が言ってんの。家なんか簡単に教えるんじゃなかった。


男の子の「送っていく」は相手の家を知るための手段なんじゃないかと、人の好意をまっすぐ受け取れなくなりそうだ。



わたしはもう葉月くんと話すことはないし、今後関わろうとも思わない。それに、葉月くんの最近の噂は知ってるの。


茉耶という話し相手がいないせいで、いろんな話が耳に入るようになった。大学内で、茉耶以外の声を聞くようになった。




「俺、やっぱりどうしても栞ちゃんが欲しくて」


「……葉月くんほどのひとが手に入れられなかった女、貴重ですもんね」