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20時50分。10分前に家を出れば、飲み物を買う時間含めてぴったりの時間に向かうことができる。
直に会える、といつも穏やかな気持ちで向かうのに、今日に限ってはどこまでも暗く重たい気持ちがのしかかっている。
自分の家の鍵と、直の家の合鍵。わたし用に白いリボンがついた合鍵も、今日でさよなら。
ふたつを持って重い気持ちでエントランスを出れば、下がった気温に乗せられたひどくつめたい風がわたしを突き刺す。
同時に、視界に映ったそのひとを認識して、思わず息を呑んだ。寒さが呼び込む憂鬱を倍増させるような聞き覚えのある声に呼び止められる。
後退りしそうになって、自然と目に出す足が止まった。
「……栞ちゃん」



