「なお、起きて?」


「髪、かわいい」




頬をすくっていた右手が、後頭部を撫でるようにわたしの黒髪を梳かした。小学校に通っていたころから今までずっと、黒髪のショートボブを変えていなかった。顎ラインに切り揃えてもらって、最近は外に跳ねさせてアレンジなんかして。



寝ぼけた直の言葉にどんな意味があるのか。そろそろわたしはトレードマークであるミニボブを卒業しようと思っていた。




「……短いの、すき?」


「うん、好きだよ」




口角をゆるりと上げて、“好き”と答える直を見て、髪の毛、伸ばそうと改めて決意した。



……直の彼女は、黒髪のショートボブの女の子ばかり。ボブの子を選んでいるのか、付き合ってから髪を切っているのかはわからないけれど、とにかく、直の隣を歩く女の子の髪は総じて短かった。