低温を綴じて、なおさないで




「(……なお、起きてない?)」




直は起きてすぐ、必ず部屋の中に自然のひかりを取り込む。部屋の中、たまに目が合ってしまうと、寝起きで可愛くないわたしはすこしだけ照れくさくなるのだ。


窓は閉められたまま、音の伴わない「おはよう」を交換しあう。起き抜けとは思えない爽やかな笑み、そのたびきゅん、と音が鳴って心臓を揺らしていた。




そんな直の部屋のカーテンが閉まったまま。デジタル時計が7時12分を表示させていた。まだ時間もあるから、柵をぴょんと越えて、わたし専用に開けられた窓をがら、とスライドさせた。




「直、おはよう」




ベッドの上、首元まで布団を上げる直が視界に映る。気持ちよさそうに寝息を立てるきみに朝の合図を送った。


たぶん、年に1回あるかないかの寝坊日だ。すくなくともわたしははじめて見た。


小さいころから幾度となく訪れている、いつでも綺麗で整ったお部屋。必要最低限の家具の中、文庫と単行本、参考書がぎっしり並ぶ大きな本棚だけ、異質だった。



直が横になるベッドに近づいて、横を向いて眠るきみの顔を覗き込む。