低温を綴じて、なおさないで




直は、あなたからの手紙を大事にしてたよ。


確かに直はわたしが大切でわたしを見てくれているけれど、あくまで幼なじみとして、でしかない。



わたしを彼女にしてくれること、一生かかっても、ないの。


直がほんとうの意味でわたしを見てくれたことなんてないし、きっと今後もそうだ。




だけど、わたしの口からは言えなかった。


わたしが何を言ったって過ぎてしまった過去を取り戻すことはできないし、彼女を傷つけた事実は変わらないから。彼女が感じたことだけが彼女にとっては事実だ。



彼女の大きな目に溜まった雫が、一直線にこぼれ落ちた。




「あなたのせいで、なおくん、まったく私のこと見てくれなかった。……だから、私は間違えて……」