合ったままの大きな目、おそらくまつげパーマが施された長くて上向いた薄い色素に吸い込まれたようにその場にとどまった。




「付き合っていたひとが好きで、おうちによく借りに行ったりして」




ゆっくりと瞬きをしながら思い出すように話し始めた彼女。今もきっと脳内に残してあるような綺麗な思い出を引っ張るように、和やかな笑みを浮かべている。



きっとその付き合っていたひとが素敵なひとで、消したくない思い出なんだろうな、とわかる。わたしにはそんなふうに思える過去の恋愛経験がなくて、ちょっぴり羨ましくなった。



……わたしが消したくない思い出にはいつも、恋人ではなく直がいる。




「わたしも、幼なじみとよく読みあってるんです。すきな文章で誰かと繋がれるの、いいですよね」



「……幼なじみ、」