それもまた、むかついた。なんにもうまくいかなくて。


だからときどき公園で会っているふたりへ、偶然を装って邪魔をして、悲劇のヒロインを演じようとしたけど詰めが甘かった。



けっきょくは、矢野さんのことしか頭になかったから。「一途にすきなひとを想い続けているけれど、実は裏で仲良くしていた友達を発見してしまったヒロイン」にはなりきれなかった。



それもそのはず。私はヒロインと正反対にいる悪役。それどころか、悪役にすらなれない、名前のつかないモブなのだから。モブが出しゃばったって、限界だ。



声を荒らげて、逃げることしかできなかった。ずっと嘘をつき続けていたのは私のほうだって、きっと、知られた。



もう栞は私と仲良くしてくれないかな。


……してくれないに決まっている、悪意を持って嘘をついて身勝手な嫉妬を向けて、傷つけようとしたのは他でもない私なのだから。




雨がつめたく私を突き刺す。私の嫌なところ全部を見ていた空から怒られている。



涙を隠すためのやさしい雨なんかじゃない。ただただ私のこころの乏しさ、俗悪な感情、いやしさを突きつけるための、黒く濁って澱んだ泥のような雨。