低温を綴じて、なおさないで





この日の記憶は、私にとって甘すぎたのに、苦くてつらくてくるしいものになった。


なのにわすれたくなくてずっと頭にも心にも身体にも残り続けた。この夜の満ち足りた感覚をわすれられなくなった。



──人生でいちばん満たされた夜だった。



こんなにも満たされて、もっとってねだりたくなって、欲しくて欲しくて求めたこと、これまでなかった。



運命のひとでも、王子様でも、太陽でもない。名前すら覚えていない、言い間違えるような最低なクズだった。


なのに脳裏に焼き付いて離れない。最低なことを言われたはずなのに、最悪な出来事のはずなのに、それでもあなたと一緒にいられるならそれでよかった。



……どんな目的でも、どんなふうにあしらわれても、どんなかたちでも、一緒にいたかった。



連絡先も知らない、定期にすらなれなかったの。私のこと、どう使ったっていいから都合良くていいから、そばに置いてほしかった。