「にしても、普段ほかの女の合鍵持ってるような男とよく付き合いたいと思うよね」
「そっくりそのままお返しするわ」
合鍵を返されたタイミングで、彼女の存在を把握する。
大学生になってから「あ、こないだの子?」「そう」といった会話を何回しただろう。
直は、彼女が途切れない。
小さい頃からずっと近くで見てきたけれど、ずっと女の子から好意を送られ続けているのだ。ずっと、誰かから熱っぽい視線を受けている。
けれどあまり、長続きしない。それもそうだ、直が自分から告白した女の子って、たぶんいない。顔も名前も思い出せないような元カノが大勢いる。
……ただ、ひとりだけ、鮮明に思い出せる子はいる、けれど。



