ほんとうに矢野さんのおうちは近かった。新歓の会場だった居酒屋から徒歩5分。ふたりで二次会を欠席して、抜け出した。
途中コンビニに寄って、矢野さんはなんだか度数の高そうなお酒、私はオレンジジュースを手に取った。お会計を別々にしない、そんな小さなことでうれしくなったの。
「飲まないの?」って聞かれて「まだ18なので」って答えたら「真面目だねー」と笑われた。真面目な女の子は嫌いって言うなら、今度は考えてみるから。
お邪魔します、と人生ではじめて男のひとの部屋に踏み入れた。それだけでどきどきしてたまらなくて、またしばらく矢野さんの顔を見れなくなった。それでもずっと降り続ける甘い眼差しには、恋心を加速させるばかり。
言っていた通り、黒くふわりと体が沈むソファーに並んで座ってプロジェクターから壁に映された恋愛映画を鑑賞した。
黒とブラウンで統一された、余計なものが一切ないお部屋。ブラウンウッドの棚には香水やアロマ、観葉植物が飾られていて、淡いオレンジの間接照明が落ち着きをくれる。



