「は、はい」


「はは、緊張しないで? 今日、ひとりで来てくれたの?」




顔を覗き込むように、やわらかい笑みとやさしい声色を向けられた。それだけで、一目惚れを確定させるには十分だった。



遠くから眺めたオーラはそのまま、近いほうがかっこよくてきらきらしてて、全然直視できない。声を出すのも震えてしまう。こんなにも誰かと話すことで緊張したのははじめてだった。



昔からコミュニケーション能力には自信があった。だから今日もひとりでも参加を決めたし、苦じゃないと思っていたから。



そんな私のこれまではいとも簡単に崩されてしまったんだ。緊張しすぎて、うまく言葉をつかえている気がしない。




「……ほんとうは、一緒に来る予定の子がいたんですけど」


「そっか。じゃあ俺とお話しよう」




意を決して、顔を上げた。矢野さんの涼しげな瞳が私を捕らえる。ぱちぱちと瞬きをしても、ずっと、彼の視線は私に向けられたまま。


ずっとずっと、このまま永遠に私と視線を結びつけていそうで、逃げられる気がしなかった。




私は簡単に矢野さんに捕まってしまったし、捕まりに行ってしまったように思う。