低温を綴じて、なおさないで




「な、んで。栞と直くんが一緒に、」


「ごめん、茉耶。……ずっと、何も言えてなくて」


「……ずっとふたりで……私のこと笑ってたの……?」


「そんなことない、わたしは、」


「騙してたのは事実でしょう!?」




声を荒らげた茉耶を見て、あぁ、そうか、と心臓が掴まれる感覚になった。


わたしの知らないふり、はそんなに柔らかいものではなく、茉耶を騙すのと等しい強い行為だったんだ。改めて突きつけられる、わたしがどれほど最低なことをしていたか。



最低な嘘で、茉耶を傷つけ続けていた。



意図こそわからない茉耶の小さな嘘と、わたしの最低で身勝手な大きな嘘が一緒に綻んでしまった。