──……たとえばこの鍵も、わたしと直の約束だ。
『なーくんが近くにいてくれたら安心なんだけどねえ』とあの日のお母さんの言葉が作ったこのルール。お母さんは、いまだにわたしたちを取り巻く異性がお互いしかいないと思っている節がある。
全く、そんなことはない。
わたしも直も人並みに恋をしてきているし、直は特に、わたし以上に恋人のいない期間が少なすぎる。
ほぼほぼ彼女が途切れない直は、1ヶ月もいなければ長いほうだと思う。わたしの恋人のいない期間をかけたら、ほぼほぼ機能しなくなるこのルール。
地元を離れて大学に進学するとき、お母さんがすごく心配してくれた。そのときぽろっと溢した言葉に、同じ大学への進学が決まっていた直が提案をした。
“合鍵、交換させてもらってもいいですか。栞に何かあったらすぐ助けに行きます”



