低温を綴じて、なおさないで



わたしひとりの不合格な練習に、突然の参加者。


空気を揺らして耳にすっと落ちた疑問系。顔を上げる前に、その声によって引き上げられた。いつもみたいに。




「栞」


「……なお、なんで」


「栞がいる気がして」




思ってもいない祝福を伝えなくちゃいけないかもしれない相手が、なぜかここにいる。


どうして? まだ20時。茉耶と一緒にご飯を食べていたっておかしくない時間だ。それとも、夕方には解散したのかな。



わたしの意識を引き上げてから、直が定位置の右側のブランコに腰掛ける。ゆるく漕ぎ始めるきみに、さっきの疑問系にも関係する疑問をわたしのほうから投げかける。



聞きたくなくて確かめたくないのに、どうしても気になる、そのこと。