低温を綴じて、なおさないで





よかったね、わたしもうれしい、おめでとう



直の彼女に対して一度も迎え入れたことのない感情を、うまく伝えられるだろうか。



「……よかったね」



お祝いの練習。予行練習なのに、声が震える。うまく言えない。



「……わたしもうれしい」



うれしいという最大のポジティブ感情に似合わないネガティブな表情と声色でしか、紡げない。



「……おめでとう」




……──なんで茉耶のすきなひと、直なの。




「なにがおめでとうなの?」