低温を綴じて、なおさないで



たくさんの人に踏まれて茶色の固くなった土に、足をつけたり浮かしたり。いつもは隣に直がいて、下を向いていると「栞」と名前を呼ばれて意識を引っ張ってくれる。


昔から困ったとき、どうしたらいいかわからないとき、いつもわたしに手を伸ばして起こしてくれるから、導いてくれるから、直に甘える癖がついてしまった。




……わたし、ちょっぴり油断していたかもしれない。わたしはずっとずっと性格がわるいから。



誰からも好かれるヒロイン属性の茉耶。すぐに直と付き合うことになってもおかしくなかったのに、全然進展がない。


あれだけ茉耶が直をすきだと恋する乙女のように頬を赤らめていたのに、その割には積極性があまり見受けられなかった。



今までなにもしなくても男の子からのアプローチがあったから、超受け身の直に苦戦しているのかな、とも推察したりして、なんだかんだ茉耶と直の物語は始まらずに終わるんじゃないかって、最低なことを考えていた。



もしふたりの物語がはじまってしまったら、どうやってお祝いしたらいいのかな。