低温を綴じて、なおさないで




きっと茉耶のどきどきは最高潮。今日がその日。


笑顔同様まばゆく弾いた声が、わたしの耳から出ていかない。この言葉を受け取ってから今日まで、ずっと離れなかった。



今まで、茉耶から聞く直はずっと大学内だった。あくまで講義限定のお隣さん。



……のはずが、いつの間にか大学を越えていた。気づかないうちに、ふたりの距離が近づいていたことに胸のざわめきが止まんなかった。



わたしがなにか口を出す権利は当然にない。こんなふうに、もやもやしてしまう権利すらないのだ。むしろ、茉耶に対して直のことを知らないふりをしている時点でかなりの罪で、一生かけてもその権利は付与されない。



恋人でもない、法律で結ばれているわけでもない。


幼なじみなんていう確固たる関係に見せかけていて、実はいちばんあいまいで揺らいでいる関係なのかもしれない。