𓇠
ひとり、いつものホワイトビールを片手に、女子大生。
さながらまるでヤケ酒、失恋でもした可哀想な女にしか見えないだろうけど、わたしは夜の空気をひとりじめできるこの時間がすきなのだ。
少し前まで散歩が心地良かったのに、すっかり秋が冬に捕まってしまった。裏起毛のパーカーが冬を主張している。
気温はすでにバトンタッチしているのに、風に揺れる木々は暖色で彩られて今が見頃、四季のさんばんめが粘って主張を続けていた。
今日はわたしたちだけの約束を投げていない。投げても意味がないから。
夜の公園、ブランコをひとりで漕ぐことはたまにある。外の空気を吸いたくなって、空を見上げて星を数えて月をなんとなく眺める、そんな時間がすき。
隣に直がいればもっとすきな時間になるけれど、今日はあえて、呼ばなかった。
……きっと、きょう直を呼んでもここには来ない。
数日前、約束通り茉耶と買い物に出かけたとき。別れ際に「実は」と嬉しそうに口角を上げて、街灯にも星にも負けない眩しい笑顔を向けられた。
“今度ね、直くんとデートすることになったの!”
“今日買ったお洋服、着ていこうって思って!”



