低温を綴じて、なおさないで




わたしはそこまで、他人の心の動きに敏感では、ないから。


それなのに自意識は強くて、いつも頭の中はいろんな色が混ざり合っている。





あいもかわらず降り続ける雨は止みそうにない。ざあざあと地面を打ち付ける音は、3階のこの部屋まで届く。



折りたたみじゃないビニールの長傘、前に直が貸してくれて借りっぱなしだ。




新しい傘を買う気なんて当然に起きなくて、直の、ってだけでわたしの中での価値は跳ね上がる。




「そうだ!今度買い物行くんだけど、栞も付き合ってよ!ぱーっと買い物して矢野さんのことなんか忘れよ!」


「んー、そうだね。そうしよっかな、ありがとう。いつ行くの?」


「来週の祝日行こうかなって!」


「了解。ちょうど冬服も見たかったし楽しみ」




茉耶とお買いものはたまにする。わたしも茉耶もおしゃれがすきだからこうして一緒にいくことはよくある。葉月くんと会った日、誘ってるようにしか見えないと言われてしまったミニスカートはあれから履いていない。


なんだかいやな気持ちになってしまうから、新しいボトムスを買って、葉月くんとの思い出ごと捨ててしまおう。