低温を綴じて、なおさないで




暗証番号を打ちこむ液晶に手を伸ばせば、逆の腕が捕まって後ろから強く柔い力で引き戻された。



状況を理解できないまま、目をぱちぱちさせて驚きを飲み込むしかない。気がつけば直に引き寄せられて後頭部に手が回っていて、今日のわたしと同じ爽やかな香りに包まれていた。


頬が服越しに鍛えられた胸の辺りに当たって、昨夜何度も求めてしまったつめたい温もりを思い出す。心臓を掴まれて揺さぶられているみたい。




「……な、なお?」




日常のなかで、直のほうからこんなふうにふわりと抱きしめてきたのは初めてだった。あの日も、行為が終わったら何もなかったかのように触れなかった。



そのあとも、普段も、あくまで幼なじみの距離を保っていた。恋人のような距離でパーソナルスペースに入り込むこと、なかったから。