低温を綴じて、なおさないで




わたしの住むマンションまで10分くらい。いつもの公園を横目に慣れた道をふたり並んで歩けば、あっという間にマンションの前まで辿り着く。


大きな歩幅をわたしのために小さく合わせてくれるから、直のとなりがいちばん歩きやすい。




「ここまでありがとう」


「ん」


「じゃあね、また連絡する」




余分になにか言うと、離れがたくなってしまう。同じ時間を過ごしたあとの別れ際、またすぐ会いたいな、顔を見たいな、と無意識で考えてしまうのは後にも先にも直だけだ。


葉月くんのように、この時間が終わってほしくないと思うひとにはいくらか出会ったけれど、すぐに恋しくなるのはきみだけだっていうのは元々隣に住んでいたのだからある種しかたないのかも。



すぐに直のとなりからすっと外れるように、ガラスのドアで閉まったオートロックを解除しようと背を向けた。



────「栞、待って」