あくまで乾かしやすいからここに座ったのであって、もたれかかってしまえば直はやさしくぎゅうっとしてくれるから、させないためにも背筋はしゃんと伸ばした。
爪を立てずに指の腹で梳かしながら乾かしてくれる直はプロの美容師さんかのように上手だ。まだ実家にいるとき、直の家に泊まると必ずわたしの髪を乾かしてくれた。
あの頃は髪が短かったから時間もかからなかったけど、今は背中のまんなかあたりまで伸びているから、長くてごめんねと心のなかで謝っておいた。
最近は泊まることもなかったからこういう時間はなかったけれど、さわさわと優しい動きはやっぱり心地良くて安心する。
直が乾かしてくれるこの時間がすき、その時間が長く続くから、ロングで良かったと思う。だれも直には勝てないから、今までの歴代彼氏には絶対にドライヤーの権利を渡さなかった。



