低温を綴じて、なおさないで




「……じゃあわたしも午後休む」




“じゃあ”の意味なんてないけれど。午後の講義、今日は茉耶と同じ必修科目。直とのこと、茉耶にわるいと思っているかと言われたら、たぶんそんなことはない。


それでもやっぱり後ろめたさと気まずさはあって、このあと茉耶に会って平然としていられる勇気も自信もなかった。



それなのにちゃんとわたしは性格がわるくて、直が午前の講義を休んでくれたことにうれしさを感じている。



だってその講義は、茉耶が直に会いたいという理由だけで取っている、直いわく鬼単の選択科目だったから。そんなわけない、そんな意図はないのに、茉耶よりわたしを選んでくれた気がしてうれしくなった。どこまでも最低で、恨まれてもおかしくない思考をしている。



そんなわたしの薄っぺらさがバレていたから、葉月くんはわたしに惹かれなかったし都合よく扱おうとしていたんだ。自業自得、だと思う。