低温を綴じて、なおさないで



キッチンの方向から拾ったその声で、目的のひとが向こうにいることを確認できたと同時、かけられていた布団がはだけているのに気がついた。


かあっと音が鳴ってしまいそうなくらい一気に恥ずかしさが込み上げてきて、目の下まで一気に羽毛を引き上げた。



肌を重ねて限界まで体力が奪われていって、そのまま寝てしまっていたんだ。服なんか着ているはずがなかった。




「あとで一緒にご飯食べよう。栞の足元、スウェット置いておいたから一旦それ着て、シャワーしてきていいよ」


「……ありがとう」




やさしくて温かい声色が鼓膜を揺らして、脳内がぽかぽかする。



何から何まで、お姫さまになった気分だ。



綺麗に畳まれたネイビーのスウェットのセットアップ。たまにこの格好で公園に来たりするなあと思い返す。きっとファストファッションのお店で買ったなんの変哲もないセットアップが、直が着ればブランドもののように輝く。



わたし以外の女の子をおうちに泊めても、このスウェットには袖を通していなければいいな、なんてまたそんなことを考えてしまう。