低温を綴じて、なおさないで




ひかりの下でわたしのすべてを見られてしまう恥ずかしさより、直の顔がくらくてよく見えなくなる憂いのほうが、いやだった。直だ、って実感できていないといや。



ほかのひとなら、絶対に前者が勝るから、聞かれる前に消すのに。



無意識でいつも追いかける細長い指が、わたしの身体をなぞるように触れる。それだけで肩が揺れて顎が上向く。呼吸が荒くなって、腰のまわりが疼く。それは、きっとわたしが直からの甘さを覚えているから。




「……っ、」




指先がわたしを甘やかして、何度も顔と顔の距離がゼロになって、ねじ込まれる熱のせいで息の仕方をわすれる。声を我慢しようとしても吐息が脱走していく。


密着する肌、わたしとは違うごつごつとした男の子の骨格。直の顔が見えなくなるのはいやだけど、顔が見えなくたって十分、変わらないこの低温が直である証明だ。


仕舞い込んで奥底に閉じ込めた体温と感覚が蘇っていく。