低温を綴じて、なおさないで



「……直、」


「どうしたの、しおり、」




一歩、近づいて、肩に手を置いて、かかとを浮かせた。


拒否されるより前に、重ねた唇。



考える時間を与える前に、きみの思考を奪ったわたしはずるいと思う。



がこん、とペットボトルが床に吸い付いていって、転がっていく音はわたしの心臓の音より遠い。



こんなずるくて見ていられないいやな気持ちをぶつけるしかできなくて、わたしをむすんで移して、受け止めさせようとしたの。



すべて、すくって。めちゃくちゃにして、壊して、どうにかして。



身体で繋ぎ止めようとか、そういうんじゃない。



抱え込めない黒を、上塗りして消し去ってほしかった。



わたしはどこまでも身勝手で、醜くて、ずるかった。




すきなひとでなければいやなこと、直ならいいと思っていた。