どこかでそんな驕りがあったから、どんあん理由があろうとも直が女の子からもらった手紙を大切に保管している事実に、こわくなった。いやだと思った。捨ててほしかった。破ってよ。わたし以上の女の子ができてしまう。
ちらりとおそるおそる見た差出人は、ちょっと前まで付き合っていた女の子の名前だった。
「……なお、」
「──……栞?」
思わずぽつりと唇が逃したきみの名前を拾われた。わたしの名前を疑問系で返されて、ドアのほうへ目線を寄越せば、ペットボトルを2本持った直が立ち尽くしていた。
言っていたとおり適当に選ばれた、わたしのすきないちごみるくと、直のすきなアップルティー。
やさしくわたしを呼んで心地良く鼓膜を揺らす。わたしの涙を見て驚きと心配を乗せた直の目が大きく見開かれていく。
──ねえ。醜くて、身勝手で、どうしようもない、名前をつけることすらおこがましい感情。隠したい、のに、止まらない。わたしの動きを、わたしが止めてくれない。



