「ね、暑いからエアコンつけてもいい?」
「そうだなー、そのへんの引き出しにリモコン入ってるからつけていいよ」
「やったーありがと」
「適当に飲み物持ってくるからつけといて」
「はーい」
ベッドに平行に沈んでいた身体を起こして、読んでいた本に栞を挟んでからブラウンのラグに足をつける。そのへんの引き出し、という抽象的なヒントを頭の中でぐるぐるさせながら、はじめに机の横の引き出しを覗いてみる。
なんだかわるいことをしている気分になるけれど、プライバシーの捜索を投げてきたのは直のほうだ。さっさとお目当てのリモコンを救出してこの生暖かい空間に冷風の暴力を突きつけてつめたさでいっぱいにしよう、と二段めを引き出したところで。
覗いていちばんはじめに飛び込んできたそれは、わたしの呼吸をいっかい止めるような威力があった。大事に、それだけそこに鎮座していて丁寧に仕舞われていた。



