隣に住んでいるとはいえ、なんてことのない日々に直がいない状況がはじめてで、寂しさも感じていた時期だった。




テストに焦ったり購買まで走ったり、球技大会とか文化祭とかのイベント、だれしもが経験をするひとつひとつがかけがえのない思い出になるような日常に直がいないことを受け入れたくなかった、そんなころ。



学校で会えない分、放課後に直と会うことは増えていたし、こうして勝手に部屋に上がり込むこともなんの違和感もなかった。



直もわたしも本を読むことが好きで、度々本棚に新作が追加されているのでそれを読みにくることも多かった。ベッドに寝転がって本を読みながら直の帰りを待つ時間が、すきだった。



一階から物音がして、階段を登ってくる足音がしたら「おかえり」を届ける準備をする。

この時間もすきだった。おかえり、とトスをあげたら大体いつも呆れたように笑うのだ。




「おかえり、直」


「ただいま、ってここをなんだと思ってんの。俺の部屋ね」


「…………図書館?」




わたしとはちがう制服を着た直を見て、やっぱり同じ高校にすれば良かったと3回に1回くらいは思っていた。色の違うネクタイが恨めしい。