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──夏になりかけのあの日。雨が続く季節の、束の間の太陽をよく覚えている。長袖のシャツが汗ばんだ肌に張り付くから、学校帰りに制汗シートを買って帰った。
高校2年の6月。わたしはいつもと変わらない365分の1を過ごしていた。いつもみたいに柵を乗り越えて、隣のベランダに飛び乗る。どろぼうお断り、栞専用に鍵をかけていないガラスをこっそり開けて、侵入完了。
わたしの第二の家のようなその場所──直の部屋には昔からこうして遊びにきていた。
実家が隣同士、自分たちの部屋も行き来できてしまう奇跡的な配置だった。
生まれてから幼稚園、小学校、中学校、ずっと一緒だったわたしたちがはじめて離れたのは高校だった。



