わたしの頬が直の手によって固定されて、これ以上言葉を紡ぐことを許されなくなった。


だまってなんて言葉とは裏腹に、直の塞いだ唇はやさしく、それでいて甘ったるく、すこしずつ深くなってゆく。




「……栞、」




キスの合間に、世界でいちばんやさしくわたしの名前を呼ぶ。乱れた呼吸におかしくなりそうで、葉月くんではなにも感じなかったキスに溺れそうでくるしい。




「俺は、」


「……ぁ、っ……な、お」




耳たぶを甘く噛むようにキスが落とされる。耳へとわたしの中の熱が一気に集合場所になる。



直の頭がすこし下がって、首筋に沈んだ。弱くして、わかりやすく跡をつけなかった葉月くんとは真逆で、思いきり赤く染まるように吸いつかれたのは、わたしがこの季節、ハイネックのニットを着ることが多いと知っているから。



……きみのこの跡は、なんのため。