──あぁ、わたし意外と、葉月くんに思い入れあったのかも。直以外で昔話に花を咲かせることのできる、貴重な存在だった。
すきではなかったと、わかる。けど確実に、葉月くんに対して抱いていた思いは、あった。
そしてそんなわたしは、どうしようもなく、きみに会いたくなった。
だれよりやさしい。こんなにもやさしいひと、出会ったことがない。ずるくて性格のわるいわたしをいつも受け入れてくれるひと。あのときも、醜い感情に支配されたときも、きみに甘えて、泣き続けていたわたしを慰めてくれた。
なによりも慣れた、きみへの通話コール。3コール目で出たきみに、また頼ってしまうのを、許して。今、誰よりもきみに会いたくて、顔が見たくて、どうしようもなく、触れたい。
「……直、今そと?」
『うん、飲み会。もうすぐ終わるけど、どうした?』
「……っ、会いたい。直の家で待ってるから、はやく帰ってきて」
さっきまで聞いていたつめたい声と違って、温かいトーンにまた泣きそうになって、恋しくなった。帰ってきて、と言って直の言葉を待たずに切った。こうすれば心配してすぐ飛んできてくれるとわかっている。どこまでもずるくて直に甘えすぎている、ばかなわたし。
でもだって、直ならいいの。
──なお。きみとわたしが、幼なじみでなければ隣にいられないのなら、ずっとそれでいいから。それ以上なにも、望まないから。
だから、ごめんね。直じゃないと、わたし、だめになる。
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