はあっ、はあっ、はあ…っ
…息が苦しい。
凍てついた空気が容赦なく肺に流れ込んでくる。
頭も痛い。
目の前の雪は血で赤く染まり、
私の足から流れ出る血は、止まることを知らない。
…それでも私は、足を進め、ある人のところで止まる。
「お母さん…お父さん…お兄ちゃん…!」
彼らはもう、ピクリとも動かない。
その頬に、そっと自分の手を添える。
それが嘘であることを、幻か夢であることを祈りながら。
…でも、現実はそれほど甘くない。
夢も、幻も、私に見せてはくれない。
しっかりと、自分の手に彼らの冷たくなった肌が触れ、脈を確認しなくなった時。
ああ、これが、絶望というものなのか。
と初めて悟った。
「いや…いやだ…!嘘よ!嘘…!おいて、いくの…?私を置いて…?」
彼らは何も答えない。
そのうつろな瞳にも、もう光が宿ることはない。
…どんどん息が苦しくなる。
目の前の景色もかすんでゆく。
「いやよ…嘘だって、言ってよ…。おいていかないで…。」
薄れていく意識の中、誰かが駆けつけてくる音が聞こえた気がした。
苦しい。つらい…
誰か助けて…



