好きだから、話したい。好きだから、知りたい。だから放課後の図書室へ、星谷くんに会いに行く。だけどそこでひとつ勘違いをしてほしくないのは、彼のおすすめしてくれる本については、しっかりどれも面白いと思って読んでいるということだ。
星谷くんに会うまでは、本なんて大して読まなかったくせに。近づきたくて、勢い任せに『おすすめの本を教えてほしいんだけど』と、勇気を出して聞いたのが始まりで。
最初は星谷くんと話すための道具でしかなかったのに。気がつけば読んだ本の感想や考察を彼と話し合うくらいには、本が好きになっていた。
そして、話すたびに願う。こうして同じ時間を過ごすうちに、ほんの少しでもいいからどうか私のことを見てほしい、と。
そしていつか、きみの特別になりたい、と。
「あ、明日の英語の宿題やってない」
「なら帰ってやりなよ」
「星谷くんはやった?」
「うん。とっくに終わってる」
出会った春はあっという間に過ぎて、同じように夏が終わって、秋。
私と星谷くんは、こうして一緒に帰るのが不自然ではないくらいの仲になれた。だけど私の気持ちは、ずっと隠したままでいる。
それは、わかっているからだ。告げてしまったら、この関係が変わってしまうということが。
まだこのままでいい。何も知らない星谷くんと、まだこの距離で話していたい。それだけで今は、充分に満たされる。
もうすぐ駅に着く。電車通学の星谷くんとは違って、学校が徒歩圏内である私。あともう少しで、お別れだ。
駅が見えてきたところで、立ち止まってみる。そうすれば星谷くんも歩みを止めた。
それから、なに? と聞かれる前に、先に口を開く。
「ねぇ、星谷くん」
「なに」
「1個聞いてもいい?」
「嫌だって言っても聞いてくるでしょ、八代は」
「ひどいなぁ。本当に嫌がってたら聞かないよ」
「いいよ、なに?」
切れ長の目が私を捉える。ふたりでいる時は、ちゃんと目と目が合うから。ずっとこのままがいいだなんて思う。
──あぁ、好きだなぁ。


