願うなら、きみが






その横顔を、その目元の柔らかさを。私は今でも、鮮明に思い出せる。



あぁ、このひとって、そんな顔もするんだ、って。そう思った途端に、胸がきゅーっとなった。


そしてその瞬間、気がついてしまったことが、ふたつ。


ひとつは、星谷くんはこの先生のことが好きなんだってこと。



そして、もうひとつは。




私がこの一瞬で、彼に惹かれてしまったということ。

ひとの目って、相手によってこんなにも熱の量が変わるのか、と。私もそんなふうに見てほしい、と。

あの時星谷くんを見て、そう思ってしまったのだ。



大きなきっかけがあったわけではないし、私自身が彼に何かをされたわけでもないけれど。

朝に太陽が昇るように、夜に星が見えるように。まるでそれが自然なことのように、先生に恋をしているであろう彼に、恋に落ちてしまった。

たった、それだけ。それだけの、私にとっては胸いっぱいの出来事が、放課後の図書室で起きたのだ。




だけど、不思議に思ったことがある。入学してまだ日が浅いのに、星谷くんと先生は、なんだか随分親しいように見えた。それは彼が図書委員だから、という理由だけではない気がして。



『あのー……星谷くん』

『なに?』

『朝倉先生と、仲良いの?』

『仲が良いっていうか……』



後日、こっそりと聞いてみた。この時の星谷くんの目が、ほんの少し泳いだことを見逃さなかった。へぇ、やっぱり先生のことになるとこんなふうにもなるのか、と。どうしてかものすごく泣きそうになったのを覚えている。




『兄貴が、前に付き合っていたひとなんだ』





数秒後、ぽつり、星谷くんの聞こえるか聞こえないかの声が耳に届いて。その瞬間に、思った。

あぁ、私はきっと、朝倉先生(あのひと)には勝てないのだ、と。







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あれから2度季節が変わった今でも、気持ちは宙ぶらりんのまま、届かないでいる。


それは私だけではなく、彼もだ。