星谷くんは、本の整理をしていた同じクラスのもうひとりの図書委員である田中さんに声をかけてから、図書室の出入口に向かった。
その後ろをちゃっかりとついて行く。
「……一緒に帰っていい?」
「うん」
図書室を出る時だって、そう聞いた私の方は向かずに、ただカウンターの方を見つめていた星谷くんの横顔は、やっぱり綺麗で。
そして、思い出す。
私が初めて、その横顔を見た日のことを。
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高校に入学してちょっと経った頃。校内をぐるりとゆっくり歩いてみたいと思い、放課後ひとりで探索をしていたことがある。
『ここで最後、かな』
大体回り終わって、家庭科室、美術室の前を通り、最後に図書室。この学校の図書室は、その辺の高校よりも蔵書数が多いらしく、本はあまり読まないくせしてちょっとわくわくしている。
そんな気持ちを抱えて入った図書室には、想像していたよりもたくさんの本があって、つい手に取りたくなった。
図書室の中をゆっくりと歩く。そうすればカウンターの中に、知っている顔が先生と話しているのが見えた。あれは同じクラスの星谷くんだ。星谷くんは図書委員なので、きっと今日は図書当番の日なのだろう。
星谷 瑞希くん。クラスの男子の中でも大人びていて、友達と話しているのも見かけるけれど、基本的にはいつも自分の席で本を読んでいるようなひとだ。だから図書委員になったのも、本が好きだからなのだと思った。
話したことはほとんどないくせに。なぜかそのふたりから、星谷くんから目を離せなかった。
今なら理由はわかるけれど、その時は、どうしてかわからなくて。吸い寄せられるように、カウンターまで近づいた。
そしてそこで、気がついてしまったのだ。星谷くんの先生に向ける眼差しが、いつもの彼の他人を見る目とはどこか違うということに。


