願うなら、きみが






「ふふ、どうしてそう思ってくれたの?」

「だって先生、かわいいし、やさしいし」

「もう〜嬉しい」



先生との年齢は10個ぐらい離れているはずだけれど、同級生と話しているみたいな感覚だ。かわいらしく笑う姿を見て、星谷くんもこの笑顔にきゅんとしているのだろうと思う。

だけどすぐ、「そんなこと言われたの、初めてかも」と、先生の視線が下に落ちる。その声はどうしてか、ほんの少し寂しそうだった。



「えぇ、それは嘘です」

「ほんとほんと。むしろ言われたことがあるのは、その逆かなぁ」

「逆……?」

「なんかね、やさしすぎてもだめなんだって」



それを聞いて、なぜかドキリとする。その先の言葉は聞かない方がいいと、直感でそう思った。どうしてかは、わからない。勘としか言えない。



「おかしいよね、やさしい方がいいじゃんね」

「……」



だけど私は、この話題を別のものに変える話術など持ち合わせてはいなくて。相槌すら上手く打てない私に、先生はどんどん言葉を続けた。



「でも、もっとおかしいのは私かも」

「え、」

「そんなこと言われたのに、今でも好きとか困っちゃうよね」



え──


目が大きく開いてしまったのが、自分でもわかった。視界に映る目の前の先生は、本当に困ったように笑う。


やっぱり、直感は当たっていた。


だって今、好きって。今でも好きって。

それってつまり、先生には今、思いを寄せている誰かがいるってことで。

どうして、なんで、そんなこと。


たかがそこまで親しいわけでもない生徒に言うことなのだろうか。いや、だからこそなのかもしれない。何も知らない私にだから、さらりとそんなことが言えたのかもしれない。


だけど、先生のことはほんの少し知っているし。それに、先生のことを好きなひとがいるってことをいちばんよく知っているから。



「おっと、ちょっと喋りすぎちゃった。今の内緒──」



できれば聞きたくなかった、なんて、






「内緒って、めちゃめちゃ聞こえてますよ」



そう思った時には、もう遅かった。