願うなら、きみが






「なーに、やなの?」

「いやっ、そうじゃなくて、」

「じゃあいいじゃん。俺も帰ろうとしてたとこだし」

「……なら、待ってます」



本当かな。だって先輩、さっきまで座ってお喋りしてたじゃないですか。


だけど断るにも理由がないし、もちろん嫌なわけじゃないので先輩を待つことに。先輩が鞄を取りに教室の中に戻っている間、廊下の壁に寄りかかってぼーっとする。


たぶん、さっきの女の先輩たちに捕まっていたのだろう。ちょっとだけ話し声が聞こえた後で先輩は出てきた。



「お待たせ、帰ろ」

「、はい」



何か聞かれたのだろうかと気になりながら、先輩の隣を歩く。先輩も私と同じで家までは歩いて帰れるので、校門を出てからもしばらくは一緒だ。



「なんか、変な感じします」

「変な感じ?」

「だって……」

「あ、もしかして今日お菓子ないから?」

「ち、違いますっ! 普通に一緒に帰るのってあんまりないし……、それと、誰かにあの1年生意気、とか思われてないかなって心配です」

「生意気? なんで?」



一応探りを入れてみたつもりだったのだけれど、先輩は本気でわかっていないような顔でこちらを見てくる。あぁ、たぶんもうこれ以上余計なことは言わない方がいいな。



「もう! 先輩はわからなくて大丈夫です……!」

「ふーん?」



先輩って、もしかして鈍感? まぁそんな感じはする。自分のことをかっこいいとかモテるとか、そういうこと少しも思っていなさそうだもん。






「──あ、そういえば文化祭、ひおのクラス何やるの?」



それからなんでもない話をしながら歩いていれば、思い出したみたいに先輩がそう聞いてきた。



「縁日です。浴衣着るんですよ」

「へぇ、いいね」

「そう、いいんです! 好きなひとの浴衣見れるとか、サイコーでしかないですよね」



そう、つまりは星谷くんも浴衣を着るということだ。それを期待して縁日に手を挙げたので、希望通りに決まって単純に嬉しい。私たちのクラスは明日から放課後にちょっとずつ準備を始めることになっていて、それもまた楽しみで今からウキウキしている。

だって、星谷くんといられる時間が長くなるということだから。