願うなら、きみが






いちばん大事なもの、それはなんだろう。


私と先輩との関係の中でいちばん大事なものってことでいいだろうか。それならそんなの、たったひとつだ。



「……先輩の、幸せ?」

「ねぇ、それってもう答えじゃないの?」



先輩には幸せになってほしい。でも、一緒に幸せになりたいのか、幸せにしてあげたいのか、どこかで幸せでいてほしいのか。

それはまだ、わからないから。



「先輩のことは好きだけど、でもそういう好きなのかはわからない……から、答えじゃないと思います」

「ふーん。じゃあさ」

「うん?」



急に隣にあった気配が無くなったので歩みを止める。不思議に思って振り向けば、2歩後ろの辺りで八田くんは立ち止まっていた。

「どうしたの?」と問う。すると視線がゆっくりと交わる。だけどさっきまで私と会話をしていた八田くんの目とは、どこか違うように感じた。



「俺がその答えになることって、ある?」

「……え?」



気のせいかと思ったのも束の間、どうやら本当に違うみたい。頭の中でその言葉を繰り返すけれど、その意味が私の解釈と一致しているのかが疑問だ。


それに、一致していた場合、非常に困惑である。



「無理?」

「え……え? 待って、どういう意味……?」

「やっぱ伝わんないか、これじゃ」

「えーっと……?」



2歩、八田くんがこちらへ寄れば、簡単にまた隣同士になる。見上げたら見下ろされて、その目は逸れなくて。だけど逸らせるような雰囲気ではないから、私も見つめるしかなかった。



「なら、ストレートに言えばいい?」

「え、ちょっとま、」

「俺ね、八代さんのこと好きなの」

「えっ……」

「だからほんとは、こんな相談乗りたくないんだけど」

「……」

「ねぇ、聞いてる?」



誰も通らない廊下の途中で。

今私はきっと、ものすごく混乱している。