願うなら、きみが






「どうしよ……わかんなくなってきた」

「八代さんがわかんないことは俺にもわかんない」

「ですよねぇ……」



わからないけれど、八田くんに話して、八田くんに言葉にしてもらえて、もうすでにいくらかすっきりしたように思う。


口だけじゃなくて、ちゃんと自分の気持ちと向き合って考えたい。甘えてしまうことにはなるけれど、やっぱり急いで決められるものではないと思った。



「なら最初の八代さんの質問に戻るけどさ。変じゃないし、それが普通なんじゃない?」

「えっと……好きって言われて意識しちゃうの?」

「うん」

「じゃあ誰に言われてもそうなるのかな……先輩だけが特別ってわけじゃないのか……」



すっきりした、と思ったのに。そう言われて胸の中にもやもやが広がっていく。

だって普通のことなのだとしたら、今私が先輩に対して抱いているいつもと違う気持ちもドキドキも、相手が先輩だからってわけではないということだ。

そう考えたら、ほんの少しだけ悲しい気がした。どうしてだろう。変じゃないって言ってくれたのに。



「ねぇ、そんなこといちいち考えんの?」

「だって……!」

「……なら試してみる?」

「え?」

「ううん、なんでもない」



なんだろう、と思ったところで、職員室の前に着いた。八田くんにノートを渡して廊下で待つ。するとぼーっとする暇も無いくらい、八田くんはすぐに出てきた。



「早かったね」

「渡すだけだし」

「そっか」



教室へ戻る1歩目を踏み出す。それと同時に、「結局さ」と、隣から降ってきた。



「八代さんがいちばん大事だと思うものを選択していけばいいんじゃない?」



どうやらまだ私の話に付き合ってくれるらしい。