願うなら、きみが


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「これ、英語のなんだけど」

「あ……ごめん、間違えた」

「表紙全然違うじゃん」



八田くんから英語のノートを戻されて、代わりに世界史の課題ノートを渡す。彼は係ではないのだけれど、先生の気まぐれで指名されてしまって、みんなのノートを集めているのだ。

で、私のノートで最後。「すみません」と見上げた先には、呆れたような顔があった。



「いいけどさ、べつに。なんか大丈夫?」

「……大丈夫だけど、大丈夫じゃない……?」

「なんで疑問形」

「じゃあ質問してもいい?」



八田くんの方からそう言ってくれて、正直ラッキーだと思った。いや、この時を今日1日待っていたのかもしれない。


先輩の送別会から数日。私の胸の内を──先輩とのことについて聞いてほしいなって、そう思いながら過ごしていたから。



「いいけど、運ぶの手伝って?」

「もちろんです!」



だってあーちゃんはいつもの如く仁先輩と帰ってしまったし、そもそもあーちゃんにはたくさん聞いてもらっている。

それで満足していないわけではないけれど、男の子の意見も聞いてみたいなって。そうなるとその相手は私にはたったひとり、八田くんしかいないというわけだ。



半分よりも少ない量のノートを抱えて、八田くんと並んで廊下を歩く。何から話そうと考えていれば、「で、何?」と先に聞かれてしまった。



「えっと……」

「うん」

「……あ。好きって言われて意識しちゃうのって、変?」

「好きって、告白ってこと?」

「うん……」

「なに、今まで恋愛対象として見てこなかった相手に告白されて、それからなんか気になる的なこと?」

「そう……おっしゃる通りです」



私の言いたかったことをすぐに言語化してくれた。さすが八田くんである。