願うなら、きみが






「先輩、聞いてください!」



休憩室へ入れば、先に休憩に入っていたひおが俺の顔を見るなりそう言ってきた。



「昨日のこと?」

「な、なんでわかるんですかっ」



なんでって、わからないはずがない。ひおは23日、バイト中に『ついに明後日なんです!』と何回も口にしていた。

無意識だったのだろうか。なら、相当楽しみだったんだな。

そして楽しかったんだろうな、と。ひおを見れば1発でわかる。だって顔に貼り付いているから。〝超楽しかった〟って。

だから俺も笑顔を作る。こころの中はひおと反対の気持ちであることを悟られないように。



「だって顔に書いてあるから」

「えーっ! 気をつけなきゃ」



慣れている。ひおの前で、傷ついていないフリをするのは。



昨日ひおは、好きなひととクリスマスを過ごした。ものすごく楽しみにしていたのを知っているし、ひおの恋は今かなり良い方へ向かっているということもわかっている。


そして昨日、きっとまた良い方向へ進んだのだろう。


あーあ、しんどいな。



「先輩、私は今浮かれてしまっています」

「うん、見たらわかる」

「ええ、全部バレバレじゃないですか」



マイナスな感情は一旦奥底に沈めて、話したくて仕方がなさそうなひおに、「で、どうだったの?」と聞いてあげる。


そうすればひおは更に嬉しそうに、「実はですね」と笑った。ひおは何も知らない。本当はそれ、聞きたくないってこと。

だけど、そうしたのは全部自分だ。



「クリスマスプレゼントをもらったんです」

「ほう」

「じゃーん! これです!」



ひおが見せてきたのは、1冊の本。「でも私用意してなくて……いや、重いかなって思ったから……お返しした方がいいですよね……?」なんて悩んでいるひおの声がまるで遠くに聞こえた。



『いつまでもタイミングうかがってたら、誰かにとられちゃうよ?』

その代わりに、仁に言われた言葉たちが頭の中に浮かんでくる。


あー、本当だった。


なぁ、仁。もしかしたらこれ、自分の気持ちを伝えないまま終わるかもしれないわ。