願うなら、きみが






「ありがとう。大事に読むね」

「うん、感想聞かせて」



丁寧に破いた包装紙の中に本を戻す。溢れる気持ちを誤魔化すように、それをぎゅっと胸に抱きしめた。


それでもやっぱり、足りない。

こころの中に留めておくより、伝えたかったし知ってほしかった。星谷くんのおかげで、こんなにも私は幸せになれてしまうのだと。



「星谷くん、ありがとう」

「いいって」

「それもだけど、違くて」

「え?」

「今日、こうやって私に時間をくれて、ありがとう」



真っ直ぐに見上げれば、同じように返ってきた。目が合って、いつも通り鳴る胸の鼓動が心地よくて、嬉しくて、涙が出てしまいそうで。

だけど目を逸らすのが勿体なくて、そのまま堪えるしかなかった。そうやってじっと見つめていると、星谷くんの瞳がほんの少し緩んだ気がした。




「八代」

「、はい」

「俺の方こそありがとう」



名前を呼ばれて、それから。星谷くんの口から放たれたのは、たったさっき私が星谷くんにあげたものと同じ言葉だった。

どうして、と思う。だってそう言ってもらえる程のことは何もしていないから。



「え……? 私、何もあげられてないよ?」

「違くて。たくさん傷つけてきたはずなのに、こうやって一緒にいてくれてありがとう」

「え……」

「八代のおかげで、最近毎日楽しいよ」

「っ、」



いちばん欲しい言葉ではないくせに、まるでそれをもらったみたいに嬉しくて、幸せで、やっぱり収まりきらない気持ちが全身から溢れてしまいそうになった。

胸が熱い。だめだ、せっかく我慢していたのに、今すぐに声を出したらきっと泣いてしまう気がする。



ねぇ、星谷くん。

初めて話をした日より、先生への気持ちを打ち明けてくれた日より、私が告白をした日より、一緒に水族館に行った日より、今。

私への気持ちは、〝好き〟に傾いてくれていますか?