願うなら、きみが






「わ〜いいね、ここ」

「でしょ?」



混むかもしれないということで、ちょっと早めに夕食を済ませることにした。お店は星谷くんが決めてくれて、駅から5分くらい歩いたところにあるログハウスみたいな外観のカフェ。どうやらここへはよく来るらしく、本を読んでゆったり過ごすのが好きなんだとか。

たしかに、木製の家具に囲まれたこの空間は温かみを感じるし、流れている音楽はゆったりとしていて耳馴染みがいいし、とても心地がいい。


だけどさすがクリスマス。もう店内には数組のカップルが。みんな恋人同士かな、そうだよね。だって空気がなんとなく甘い気がするもの。

私と星谷くんの間にはそういう空気はないけれど、私が周りのひとたちをそう思うみたいに、もしかしたら私たちもまたそう思われているのかもしれない。

なんてこと、星谷くんには言えないから、勝手にひとりでにやにやしてしまったことは秘密だ。



「バイト先も駅から近いの?」

「うん。駅の隣の建物に入ってる」



注文を終えて料理が来るまでの間、いつも通りの会話を繰り広げる。〝クリスマス当日にふたりで会っている〟ということは、特別意識しないようにした。だって、星谷くんは絶対にしていないだろうから。

それでもやっぱりこころの中はいつもとは違くて、星谷くんに気がつかれないように、ドキドキと心地のいい音を規則的に鳴らした。



「雑貨屋さんだっけ? いいね」

「本当はその隣の本屋がよかったんだけど、バイト募集してなくて」

「そうだったんだ。じゃあ本屋さん探してるの?」

「ううん。今はバイト変えるつもりないから。けどまぁ、いつかはね」



ずっとこんな時間が続けばいいのにと、まだご飯すら食べていないのに、もうそんなことを思った。